研究内容

微生物研究を通した宇宙開発支援

 なぜヒトは宇宙に行こうとするのでしょうか。やはり未知の世界を知りたいという純粋な探究心が根底にあるのだと思います。1961年にガガーリン(ソ連)が人類で初めて宇宙に行き、1969年にはアポロ計画により月面着陸が成功しました。その後、継続的かつ長期的な宇宙研究のために1981年、スペースシャトル「コロンビア号」が打ち上げられ、1998年からアメリカ、ロシア、日本を含めた15ケ国による国際宇宙ステーション(ISS)の建設が始まりました(2011年に完成)。これにより宇宙空間に半年間以上の長期滞在が可能となったのです。以来、JAXAを初めとする各国の宇宙当局は多くの宇宙医学実験をISS内で実施しています。その様な中、当研究室も様々な地上実験を経て、宇宙飛行士の身体真菌叢評価に関する研究・「Myco」プロジェクトとISS内の環境微生物調査・「Microbe」プロジェクトに参画しました。これらの成果は、超長期の宇宙飛行あるいは地上での社会生活の質向上に役立てていきます。


 国際宇宙ステーション(ISS)に半年間滞在している宇宙飛行士の皮膚真菌マイクロバイオームを調べたところ、ISS滞在中は頬部および前胸部ともに地上より菌量は有意に上昇(図左)、Malassezia restrictaM. globosaの相対的占有率は逆転(図中)、また、マイクロバイオームの多様性は低下しました(図右)。このことからISS滞在中の宇宙飛行士の皮膚はMalasseziaで占有されている状態であることがわかりました。


関連論文

Sugita T., et al., Medical Mycol., 54, 232-239, 2016

Sugita T., et al., Medical Mycol., 59, 106-109, 2021