研究内容

医真菌学研究の発展に貢献してきた主な新種たち

 これまでに100を超える新しい分類群を提唱してきました。その中でいくつかを紹介します。


Candida pseudohaemulonii 

 タイ人患者の血液から分離した新種であり、アムホテリシンBとアゾール系抗真菌薬に低感受性です。新興真菌病原体であるCandida aurisや同様に抗真菌薬に低感受性なCandida haemuloniiCandida duobushaemuloniiと系統的には近縁です。


関連論文

Sugita T., et al., Microbiol. Immunol., 50, 469-473, 2006


Ustilaginomycetes 

  本綱に属するPseudozyma属やUstilago属は、植物病原菌として知られてきましたがヒト血液からも分離されることがわかりました。タイNIHとの共同研究でタイ人患者より分離した菌株に対して、P. parantarcticaP. thailandicaP. alboarmeniacaP. crassaP. siamensisを提唱しました。その後、患者から本属の分離例が徐々に報告されるようになりました。本属は分類の再編が行われUstilaginomycetesに含まれる複数の属に再分類されました。Ustilagoも稀に患者から分離されます。この綱(class)に属する真菌による感染症に対して、"ヒトクロボ菌症"を提唱したいと思います。

注)Pseudozyma parantarcticaMoesziomyces parantarcticusに、Pseudozyma crassaTriodiomyces crassusに、Pseudozyma siamensisUstilago siamensisに分類が改定されています。


関連論文

Sugita  T., et al., Microbiol. Immunol., 47, 183-190, 2003

Mekha N., et al., Microbiol. Immunol., 58, 9-14, 2014


Trichosporon asahii

 深在性トリコスポロン症あるいは夏型過敏性肺炎の主要な原因菌として広く知られてきましたが、基準株は皮膚由来です。"asahii"は九州大学皮膚科の旭憲吉教授の姓に由来し、これを、1929年にAkagi Seizo先生が新種として発表しました。当研究室の研究過程で種名"asahii"が使えないことが判明しましたが、これを分類学的に合法化するための論文発表を行ったため種名"asahii"を存続することができました。この結果、種名の後に"Akagi et Sugita"が付いています。 


関連論文

Sugita T., et al., J. Gen. Appl. Microbiol., 40, 397-408, 1994


Malassezia

 本菌は、ヒトの皮膚真菌マイクロバイオームの大部分を占め、環境中には存在しないヒト以外の哺乳類動物の常在菌です。宿主の状態によっては、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、癜風あるいはマラセチア毛包炎の原因・増悪因子となります。アトピー性皮膚炎患者からM. dermatis、脂漏性皮膚炎患者からM. yamatoensis、健常人からM. japonicaを分離し新種として発表してきました。 


関連論文

Sugita T., et al., J. Clin. Microbiol., 40, 1363-1367, 2002

Sugita T., et al., J. Clin. Microbiol., 41, 4695-4699, 2003

Sugita T., et al., Microbiol. Immunol., 48, 579-583, 2004