4 令和6年度の入学式は、新型コロナウイルス感染症の流行が下火となったため、4年振りに学部新入生及び大学院進学者と保護者の皆さんの参加のもとで挙行できる事になりました。さて、今年の元旦には能登半島地震が発生し多数の方々が被災されました。現地では水道設備の復旧が難航しており仮設住宅建設も遅れていることから、多くの被災者が辛い生活を送られています。被災された方々にお見舞いを申し上げます。激甚災害指定地域にご自宅がある5名の新入生が本日の入学式に参加しています。本学はこの方々を卒業までしっかりと支援して参ります。 さて、今年の桜の開花は例年よりも遅く、本学敷地内の桜も漸くほころび始めた本日、厳しい入学試験を勝ち抜いた薬学部423名、うち薬学科362名、生命創薬科学科61名の新入生を迎えることができました。また、大学院薬学研究科では51名、うち生命創薬科学専攻 博士課程(前期)に35名、後期課程に5名、及び薬学専攻 博士課程〔4年制〕には11名(うち社会人6名)の進学者を迎える事ができました。教職員を代表し皆さんを歓迎するとともに、日頃から皆さんを支援されたご家族の皆様にも心からお祝いを申し上げます。 さて、明治35年に創学された本学は今年で122回目の入学式を迎えますが、本学はこれまでに全国から学生を受け入れ38,000名余りの同窓生を全国に送り出して来ました。薬学科では第2回目の地域枠入学制度により、北は秋田県から南は沖縄県までの7県から10名の新入生を迎えることが出来た事は、本学の将来を考えると、卒業生のネットワークを全国に維持する上で喜ばしいことです。本学は今後とも卒業生が全国で多様性のあるキャリアを築くための学びの場であり続けたいと考えています。 薬学科は開学以来社会に多くの有能な薬剤師を送り出して来ました。去る2月17日(土)及び18日(日)に実施された第109回薬剤師国家試験は例年より難易度が高いものでしたが、皆さんの先輩は新卒合格率で89.73%、既卒で50.00%、新卒と既卒の合計である総数では82.21%の好成績を示しました。この結果は全国56私立薬系大学中総数で第9位、新卒者では12位でした。更に、本学は直近2回の薬剤師国家試験において、入学から一度も留年する事なく卒業し、最初の国家試験で合格する、所謂ストレート合格率では2年連続で全国私立薬系大学中1位を維持しています。6年制薬剤師教育開始以後の本学卒業生の最終合格率は、96.96%と極めて高い値を維持しています。新入生の皆さんはこれらの先輩に続く者として、誇りを持って勉学に励んで下さい。 生命創薬科学科の新入生の皆さん、皆さんの目標は、薬学教育を基盤とする創薬・化学業界の研究者・技術者から医薬品開発、健康科学・環境科学、臨床検査等の広いライフサイエンス分野で社会に貢献する人材となる事です。今年度の大学院進学率は昨年と同様に70%を超えました。本学では学部と大学院が一体化したカリキュラムのもとで、3年次より配属された研究室で教員の密接な指導の下、研究に対する姿勢と考え方を学ぶことができます。また、令和5年度の臨床検査技師国家試験では新卒3名、既卒2名の合格者を出す事ができました。勇気と情熱をもって自分自身の将来の道を見つけてください。 大学院薬学研究科に進学された学生及び社会人の皆さん、本日はおめでとうございます。皆さんは、将来、独立した研究者・指導者への道を進むことになります。人生の一時期研究に没頭し発見の喜びを国内外の学会や学会誌などに発表してください。きっと大きな達成感と喜びを経験できるでしょう。大学院では、単に高い研究知識だけでなく公正な研究に対する高い倫理観とコンプライアンス意識の重要性も学びます。薬学専攻の学生さんは臨床研究に関与する機会も多いと思います。医療情報は臨床研究の宝庫ですが、個人情報を扱うために公正な研究に加えてヒトを対象とする臨床研究のガイドラインに準拠した様々な手続きやデータ管理上の注意義務があります。将来、医療の場で後輩のロールモデルとなれるような研究力と倫理観を磨いてください。 本学の創学者である恩田重信先生は、120年以上昔に「成功は必ずしも師に依らず」(成功不必依師)と揮き毫ごうした扁額を校舎の入り口に掲げました。平易な言葉で表現すれば、「成功するためには良い師に教えを請うだけでは不十分であり、自らの努力こそが必要である」となりましょう。皆さんの先輩諸氏は、この教えを守り卒業し、社会で活躍しています。大学では、大学入試までのように「与えられた正解のある問題」のみを解くとは限りません。自ら問題を発見し、解決する能力を学ぶ場です。発見した問題には必ずしも正解はないかもしれません。しかし、そのような問いにチャレンジする事で、皆さんは社会で生き抜く人間力を養う事ができるでしょう。緑あふれる静かなキャンパスで皆さんがのびのびと学問し人間性を陶冶することを祈念して、私の式辞とさせていただきます。学長 越前 宏俊令和6年度 入学式式辞
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