講義科目
・基礎物理学(2014年からMy-CAST利用)
・情報処理演習(2021年用)
・臨床検査総合実習
・ゲノム創薬学特論A
・薬科学総合実習・演習コース(タンパク質立体構造予測の基礎)
1. タンパク質立体構造・機能予測、タンパク質ディスオーダー予測
タンパク質は、生体高分子であり、生物を形成する重要な構成要素の一つです。また、タンパク質は、 そのアミノ酸配列が決まれば立体構造も決まると考えられ、多くの研究者が様々な方法でその問題に取り組んでいますが、未だに解明されてい ない難解な分子でもあります。さらに、近年、生体内で一定の構造を取らない領域を持つタンパク質(天然変性タンパク質:Natively unfolded protein または、Intrinsically disordered Proteinと呼ばれています)の研究が進み、タンパク質は様々な要因で立体構造を形成することが解ってきました。 つまり、タンパク質は、温度・圧力・pH・変性剤などの物理・化学的な要因で立体構造を形成したり、壊れたりする他に、機能を発現する (リガンド分子と相互作用する)際に立体構造ができる例が多数見つかって来ました。 タンパク質分子は生体内で静止している訳ではなく、様々な要因で様々な構造に変化して機能を発揮しています。 研究室では、タンパク質の置かれた環境を考慮して、その環境内でタンパク質がどのような構造変化や相互作用をして機能発現を行うかを予測する 技術の研究を行っています。
図1は、配列変化による構造変化で、残基置換や挿入・欠損などによる構造変化です。図2は、結合による構造変化で、DNAなどの他の原子や分子 がタンパク質に結合することによって起こる構造変化です。
図1 配列変化による構造変化の例
(T4 Lysozyme)図2 結合による構造変化の例
(HhaI DNA Methyltransferase)
POODLE: タンパク質ディスオーダー予測 (Prediction Of Order and Disorder by machine LEarning)
POODLE-S 短いディスオーダー領域用 (for predicting short disorder regions)POODLE-L 長いディスオーダー領域用 (for predicting long disorder regions)
2. タンパク質発現・可溶性予測
組換えタンパク質技術は、タンパク質の研究や工業的利用を行う上で重要な技術ですが、目的タンパク質を得るまでに多くの時間・費用・労力が必要であり、結果として、それが得られない場合もあります。 この問題を解決するために、ヒト完全長cDNAのタンパク質発現・可溶性実験データを基にしたタンパク質発現・可溶性予測システム(ESPRESSO)を開発しました。予測対象の発現系は、大腸菌、コムギ胚芽無細胞およびブレビバチルス発現系で、 大腸菌は、2種類(特徴量、配列パターン)の統計解析に基づく発現・可溶性予測、コムギ胚芽無細胞は、その2種類の可溶性予測、ブレビバチルスでは、特徴量に基づく可溶性予測をWebシステムとして無償公開しています。 ESPRESSOの予測精度は、70〜80%で、既存の予測法と比較して、両予測法とも高精度です。今後は、ESPRESSOの改良や対応する発現系の追加などを行うとともに、可溶性タンパク質を生産するための研究開発やタンパク質発現系の特徴を詳細 に解析するなどの応用研究を行っています。
ESPRESSO: タンパク質発現・可溶性予測 (EStimation of PRotein ExpreSsion and SOlubility)
3. 医薬品情報および投薬履歴の解析
医薬品添付文書、副作用情報などの医薬品情報と投薬履歴から個々の患者に適した副作用のない薬の提案ができる情報システムの研究・開発を行っています。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)で公開されている「副作用が疑われる症例報告に関する情報」から、以下の疾病で用いられている医薬品の情報解析を統計ソフトウェアで行いながら副作用の調査を行いっています。科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業のプログラム(CREST)の研究領域「ビッグデータ統合利活用のための次世代基盤技術の創出・体系化」で2015年(平成27年)に採択された、 研究課題名「ビッグデータ統合利用のためのセキュアなコンテンツ共有・流通基盤の構築」(代表 山名教授:早稲田大学 参画大学 早稲田大学、情報セキュリティ大学院大学、お茶の水大学、電気通信大学、工学院大学、明治薬科大学)に参画
- 高血圧、高脂血症、糖尿病、リュウマチ、脳梗塞、骨粗鬆症、便秘、C型肝炎、統合失調症、うつ病 など
分担研究課題「大規模医薬品副作用情報を対象としたセキュアな副作用解析システム構築と実証実験」で 薬局を対象としたシステムづくりの研究開発を実施中。(2015年10月から2020年12月)
本研究課題では、公開されている医薬品添付文書、副作用情報などの医薬品情報と非公開の投薬履歴をセキュアな環境で情報処理を行い患者に副作用の原因と考えられる医薬品情報を提供することを目的にシステム開発を行っています。
E-mail: XXXXXX@my-pharm.ac.jp
教授 野口 保 noguchit
研究室所属学生