アクアポリンの発現
脳 目 唾液腺 気管 肺 心臓 肝 膵 脾 消化管 腎 精巣 卵巣 筋肉 白血球 赤血球
AQP0 - + - - - - - - - - - - - - - -
AQP1 + + + + + + + + + + + - + + - +
AQP2 - - - - - - - - - - + - - - - -
AQP3 + + + + - + + - + + + - + - - +
AQP4 ++ + + + - + - - - + + - - + - -
AQP5 - + + + + - - - - + - - + - - -
AQP6 + - - - - - - - - - + - - - - -
AQP7 - - - + - + - - - + + ++ + - - -
AQP8 - - + + - - + + - + - ++ + - - -
AQP9 - - - - - - + - + - - + + - + -
AQP10 - - - - - - - - - + - - - - - -
AQP11 + - - - - + + - + + + ++ + + + -
AQP12 - - - - - - - + - - - - - - - -
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Yeung, C H, Cooper, T G (2010). Aquaporin AQP11 in the testis: molecular
identity and association with the processing of residual cytoplasm of elongated
spermatids. Reproduction 139: 209-216 [Abstract]
[Full
Text]
- Hermo, L., Schellenberg, M., Liu, L. Y., Dayanandan, B., Zhang, T., Mandato,
C. A., Smith, C. E. (2008). Membrane Domain Specificity in the Spatial
Distribution of Aquaporins 5, 7, 9, and 11 in Efferent Ducts and Epididymis of
Rats. J Histochem Cytochem 56: 1121-1135 [Abstract] [Full Text]
2014,3.28 薬学会シンポ pdf 1 2 3 4 5
2014,10.17 AQP pdf 音 ビデオ
2014.10.7 pdf 音 ビデオ 1 2
各アクアポリン
AQP0
・ 目のレンズの透明性を保ち、その膜の60%を構成している。
・ AQP0の欠損はマウス、ヒトともに白内障を引き起こすが、そのメカニズムは解明されていない。
・ 細胞同士を接着させる機能がある(異論もある)が、生理学的な有意性は明らかでない。
・ 目のレンズには血管がないため、水、栄養、酸素を輸送する機能も重要であると思われる。
・ アフリカツメガエル卵母細胞において、AQP0のC末端に結合した細胞膜のカルモジュリンによって介在される外部のカルシウムの移動がAQP0の水透過性を増加させ、C末端が切断されたAQP0は基質の輸送ができなくなることが示された。
・ 最近ではマイクロアレイでの研究で、網膜にも発現していることが明らかになったが、その機能、役割は不明である。
AQP1
・ AQP1はアクアポリンとして最初に確認された。
・ 元々赤血球からクローン化されたが、AQP1欠損のマウスも、ヒトも正常であるため赤血球における役割は分かっていない。
・ AQP1を欠損したヒトは正常であるが、水分が不足した条件化では尿を正常まで濃縮できない。
・ 脊髄の感覚ニューロンに発現しているAQP1の影響で、AQP1ノックアウトマウスは感覚障害がある(異論もある)。
・ 腸のリンパ管にも発現している。
・ 胆管の頂端膜に発現しそこでの輸送はセクレチンで刺激される。しかしAQP1ノックアウトマウスで胆管の異常はなかった。
・ 膵臓の分泌顆粒に発現しているという報告がある(異論もある)。
・ 赤血球のCO2透過性についてのAQP1の生理学的な役割はマウスでもヒトでもあまりはっきりしない。
・ NOは血管内皮において、AQP1を通して透過しているがその役割は不明である。
・ O2の透過についても疑われているが実証はされていない。
・ AQP1ノックアウトマウスでは腫瘍の成長抑制、血管新生の抑制が起こる。これはAQP1を欠損することにより血管内皮の細胞輸送が遅くなっていることが考えられる。このようなことは癌の転移に関しても重要な研究になってくると思われる(追試なし)。
・ 血管内皮以外にも腎尿細管上皮の再生もAQP1欠損で遅れるという報告がある。
・ メラノサイトにある(異論もある)
AQP2
・ AQP2ノックアウトマウスは脱水により生後2週間以内に死ぬが、多飲で生き延びる。
・ 集合管の頂端膜の他、耳の内リンパ嚢(内リンパ液の恒常性維持)、精巣網、輸出管、精巣上体にも発現しているが(異論もある)、その生殖器官系での機能、役割は不明である。
・ 他は腎臓のアクアポリン参照
AQP3
・ アクアグリセロポリンである。
・ 消化管で重要な役割を担い、側底膜に存在する。
・ 大腸炎による結腸上皮の障害を回復させる。
・ Mgにより発現が増強される。
・ 結腸癌を増殖させる。
・ その他、気道組織の上皮と肺癌細胞に発現、砒素吸収の可能性、角膜再生、赤血球に発現(マウスではAQP9)などの報告がある。
・ その他は皮膚のアクアポリン参照。
AQP4
・ グリアに高発現。脳のアクアポリン参照
・ ノックアウトマウスは視覚、聴覚に異常ありとの報告がある。
・ その他、筋細胞、胃壁細胞にも発現するが、ノックアウトマウスの異常は見受けられない。
AQP5
・ 外分泌腺に広く存在している。
・ 唾液腺で分泌顆粒の接着・融合に関与している可能性がある。
・ ムスカリン刺激で管腔膜にトラフィックする(異論もある)。
・ 欠損によりシェーングレン症候群を引き起こす。
・ 腫瘍壊死因子αがAQP5の発現を減少させる。よってシェーングレン症候群の外分泌腺の慢性炎症もAQP5の発現を弱めている可能性がある。
・ Ⅰ型肺胞上皮細胞の頂端膜に発現している。
・ ブルンネル腺の顆粒に発現している。
・ 汗腺にもある。
・ エストロゲン投与によりマウスの子宮のAQP5が急増する。
AQP6
・ AQP2のホモログとして認識され、腎臓に特異的に発現していると思われていた。しかし最近の研究で小脳とシナプス小胞に発現が確認された(異論もある)。
・ 腎臓においては集合管の介在細胞に発現している。
・ エンドソーム(?)に局在、Hポンプと共局在化している。
・ 水銀などの刺激により開口しアニオン、特に、塩素や硝酸イオンを水と同じように透過する。
・ 尿素、グリセリンも通す。
・ シナプスにおいて分泌顆粒の接着・融合に関与の可能性。
AQP7
・ アクアグリセロポリンである。
・ 消化管上皮に発現し、砒素の吸収に関与か。
・ 脂肪細胞での発現は確認されておらず、脂肪組織の血管内皮に発現していて、グリセリンの通り道として機能していると考えられる。
・ ノックアウトマウスは生後3ヶ月頃から体重増加はなしに内臓肥満(異論もある)。ヒトの欠損症例では内臓肥満なし。
・ β細胞に発現し、ノックアウトマウスはβ細胞内のグリセリンが上昇し、インスリン含量やβ細胞数減少。
・ 成熟精子に発現し、ミトコンドリアが密集する精子の尾の基部に多く発現している。しかしノックアウトマウスの精子の機能は正常であることからその役割は不明である。
・ AQP7は腎臓の近位尿細管の刷子縁膜に存在している。
・ AQP7ノックアウトマウスは尿中にグリセリンを喪失してしまうが、それによってグリセリンとグルコースの代謝には問題は起きないようである。
・ ヒトゲノムにおいてAQP7に高い相同性のある3つの偽遺伝子があり、種特異的な複製も報告されているので、AQP7には何らかの進化の歴史があるのかもしれない。
AQP8
・ 異論はあるが、肝細胞のミトコンドリアに発現、がん細胞のアポトーシス死との関連が指摘されている。
・ 過酸化水素を通す。
・ NH3をガス状態で透過するとの報告あり。
・ 大腸炎のラットモデルの遺伝子発現像においてダウンレギュレーションがみられる。
・ ビタミンD欠如ラットへのビタミンD投与により十二指腸の粘膜でダウンレギュレーションがみられる。
・ 膵臓の腺房細胞の頂端膜に発現し、浸透圧に関与か。しかし、ノックアウトマウスの膵臓機能に異常なし。
・ 精巣に発現するが、ノックアウトマウスの精子に異常なし。
AQP9
・ アクアグリセロポリンである。
・ 大きな分子である核酸の原料プリン、ピリミジンを通す。
・ ヒトでは白血球に発現するがマウスでは赤血球に。
・ マクロファージに発現している。
・ 砒素を肝臓に取り込む。
・ 急性前骨髄性白血病の治療に有効な抗癌剤、砒素三酸化物を吸収する。
・ 異論はあるがグリア細胞にあるという報告がある。
・ チアゾリジンジオン(2型糖尿病治療薬)によって白色細胞組織での発現が刺激されるが、脂肪組織での発現は現在も議論中である。
・ 破骨細胞の分化、特に融合過程においてAQP9mRNAの高レベルが報告されている。
・ 非特異的AQP9阻害剤のプロリジンは劇的に破骨細胞のサイズと破骨細胞ごとの核酸の量が減少させたとの報告がある。しかし、ノックアウトマウスでの骨の異常はなかった。
AQP10
・ アクアグリセロポリンである。
・ 初めは6番目の膜貫通ドメイン以外不完全なスプライシングでみつかり、AQP10の機能は貧弱とされていた。
・ 独立して完全にスプライシングされた形態としてクローンされたヒトのAQP10の機能はアクアグリセロポリンとしてのものだった。
・ 腸クロム親和細胞(EC細胞)での分泌顆粒に発現している(異論もある)ことからセロトニンなどの生理活性物質の分泌代謝に関与か。またセロトニン分泌が確認されるコレラによる下痢患者で発現が低下していることがマイクロアレイにより確認された。
・ 十二指腸と空腸の特に粘膜に発現しているということだったが、免疫組織学上の結果は違い、不完全なスプライシングの方は、十二指腸の粘膜下毛細血管の上皮細胞または、内皮細胞の頂端膜に存在し、完全にスプライシングされた方は、EC細胞の分泌顆粒に局在していた。
・ マウスにおいては偽遺伝子である。従ってマウスは必然的にAQP10ノックアウトマウスであるが、機能的に問題はない。ウシも。
・ その他、RT-PCRによりAQP10は胎児の歯、こう筋、歯肉に存在することが分かったが、生理学的な有意性は明らかでない。
・ いくつかの動物では広い発現があり、犬では結腸にも発現している。
AQP11
・ AQP11は広く分布し精巣、胸腺に高く発現し、腎臓、腸、肝臓にも発現している。
・ 腎臓においては近位尿細管に発現し、主に細胞内の小胞体(ER)に存在する。
・ ノックアウトマウスは致命的なのう胞腎による腎不全を患い、生後2ヶ月以内に死ぬ。
・ のう胞は近位尿細管細胞の空胞変性の後に起きる。
・ ノックアウトマウスにおける空胞は腎臓以外にも、肝細胞の門脈域、腸の上皮細胞の絨毛の先端に存在するが、のう胞の発達や機能的な異常はない。
・ これらの空胞はノックアウトマウスにおける細胞障害が原因(アポトーシス亢進)と考えられている。小胞体の恒常性の維持とAQP11の関係性なども指摘されており今後の研究が期待される。
・ エンドソームのpH調節に関与している。
・ エンドソーム機能異常で拡張している可能性。
AQP12
・ AQP11と32%の相同性があるが、その他のアクアポリンとの相同性は15%以下である。
・ アフリカツメガエルの細胞膜には発現していない。
・ トランスフェクトすると培養細胞で細胞内での発現が確認された。
・ 膵臓に特異的に発現している。特に腺房細胞に発現している。AQP1、AQP8も発現しているが、それらのノックアウトマウスに異常がなかったことから、AQP12が機能を補った可能性がある。
・ AQP12には逆の支配を受ける二つの遺伝子が存在する。片方はAQP12A、もう一方はAQP12Bである。
・ AQP12Bは不完全な遺伝子で、おそらく偽遺伝子である。またAQP12Aと高い相同性があり、AQP12AmRNAの安定性を調節している可能性がある。
・ AQP12のカルボキシ末端は種の中で不一致である。大部分のアクアポリンは種の中でアミノ酸配列は相同だが、AQP6、AQP7、AQP12のように種特異的なカルボキシ末端をもつものもある。
・ AQP12欠損マウスはCCK誘発急性膵炎が重症化する(エンドサイトーシスの異常?)。
・ AQP12は基底膜近くの細胞内オルガネラに発現
AQPノックアウトのマウスとヒトの表現型
ノックアウトマウス ヒトにおけるノックアウト
AQP0 白内障 白内障 AQP1 知覚障害、脂肪吸収不全症 正常、軽度の尿濃縮力低下 軽度の尿濃縮力低下 AQP2 致命的な尿崩症 致命的ではない尿崩症 AQP3 尿濃縮力低下、乾燥肌 正常? AQP4 軽度の尿濃縮力低下 不明 視覚、聴覚、嗅覚障害 脳浮腫の減少 AQP5 口渇、角膜菲薄化、低発汗 不明 AQP6 正常? 不明 AQP7 軽度の肥満 正常 ランゲルハンス島細胞の縮小 尿中へのグリセリン消費 グリセリン輸送の低下 AQP8 正常、精巣の肥大 不明 AQP9 正常、肝臓でのグリセリン吸収低下 不明 AQP10 正常、偽遺伝子 不明 AQP11 致命的なのう胞腎 不明
AQP12 正常? 不明
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