ビッグデータを用いた副作用解析 | 明治薬科大学 医療分子解析学研究室

ビッグデータを用いた副作用解析

趣旨

専門研究機関により、多様な医薬品を網羅する大規模な副作用自発報告データベースが公開されています。これらの情報源には患者背景や医薬品名とともに数百万件~数千万件規模の副作用情報が格納されていることから、解析に供することによって患者、薬物、副作用間の関係を網羅的に抽出することができます。

当研究室では主に鎮痛・緩和ケア領域で使用される薬物に注力し、新規な可視化手法を考案するとともに、多次元の副作用情報に対するオピオイド、NSAIDsといった鎮痛薬の臨床使用における薬剤選択の基準を提唱してまいりました。また、併用により特定の副作用を抑制する薬物の検討を行い、ドラッグリポジショニングの可能性を示唆できる多様な医薬品を見出しています。これらの中には副作用抑制作用機序の不明な薬物も含まれていることから、新規な創薬ターゲットの発見に繋がる可能性もあります。

趣旨 

薬剤性肝障害予測システム

薬剤性肝障害予測システム「DILI/MIE-QSAR (プロトタイプ)」を公開しました。当研究室では創薬シーズの適切な毒性評価を目指すAMED創薬支援推進事業「創薬支援インフォマティクスシステム構築プロジェクト」において、化学構造を用いた薬物性肝障害誘発薬物の識別モデルの構築を担当してきました。薬物性肝障害は心毒性とともに医薬品の市場撤退における最も重要な要因であることが知られています。医薬品候補化合物の肝毒性は創薬早期において識別が望まれる特性の一つであると考えられます。前臨床試験を実施する前に肝障害を誘発する可能性が看破できれば、創薬過程におけるドロップアウトや上市後の臨床的アクシデントを防止することができると考えられます。特に、化学構造からの予測は創薬の最初期に適応できるためにリード化合物のフィルターとして有用です。しかし、このモデル構築においては、肝毒性の有無が明白な化合物が限定的、発症機序の解明が不十分、化学構造と肝毒性の関係が多様・複雑である、といった問題点がありました。そこで、米国FDAが構築している副作用データベースFAERS(JAPIC AERS)を用いて肝障害誘発薬物を定義し、肝毒性のエンドポイントを設定しました。一方、米国Tox21プロジェクトが公開している59種類の核内受容体・ストレス応答パスウェイの活性値に対する予測モデルを構築し、FAERS収載医薬品の予測値を得ました。これらの情報を統合し、核内受容体等の活性情報を化学構造記述子とともに機械学習に供することによって肝障害性の予測を達成しました。この薬物性肝障害予測システム(プロトタイプ)は、核内受容体等の活性予測モデルとともにウェブ上に公開しています(https://dili-toolbox.nibiohn.go.jp)。本システムでは広範なケミカルスペースにおける核内受容体等に対する応答と医薬品ケミカルスペースにおける肝毒性の予測が可能であることから、多方面における活用が期待できるものと考えています。

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